デュアルキャリアという選択。Bリーガー牧隼利による”新しいアスリート像への挑戦”

インタビュー記事
デュアルキャリアという選択。Bリーガー牧隼利による”新しいアスリート像への挑戦”

ピッチで輝かしいプレーを見せるアスリート1人1人に、育成年代の頃の努力や周囲のサポートがあり、引退後の新たなチャレンジがある。izmマガジンではアスリートを中心にスポーツに向き合う人々のストーリーを、良い部分も悪い部分も包み隠さずお届けする。

Vol.9の今回は、福岡大学附属大濠高校から筑波大学、大学在学中に特別指定選手として琉球ゴールデンキングスに入団し、卒業後に正式契約。プロの舞台で活躍しながらも、積極的に発信やスキルを磨き、デュアルキャリアに挑戦している牧選手のバスケットボール人生の経緯と想いに迫ります。

〈PROFILE)牧 隼利
1997年12月14日生まれ埼玉県出身。琉球ゴールデンキングスに所属するプロバスケットボール選手。選手としての経験を積み重ねながら”デュアルキャリア”という言葉を掲げ、バスケットボールとは違うキャリアにもチャレンジしている。SNSの総フォロワーは3万人を超える。

デュアルキャリアを意識したきっかけ

【izm】
バスケを始めたきっかけを教えてください。

【牧】
バスケットボールを始めたきっかけは、お父さんがバスケットボールをしていたので、その影響で小学校1年生から、始めました。

【izm】
お父さんもプロバスケットボール選手でしたか?

【牧】
いえ、お父さんはバスケットボール選手ではなく、大学まで部活でバスケットボールに励んでいたと、聞いています。

【izm】
バスケットボールはお父さんが、させたかったのでしょうか?

【牧】
いえ、お父さんが私にバスケットボールをさせたかったわけではありません。私自身はサッカーもしていましたが、バスケットボールの試合の映像を見たことがきっかけでやろうと決めました。

デュアルキャリアという新しいアスリート像

【izm】
デュアルキャリアを意識したきっかけを教えてください。

【牧】
自分は、将来のことを考えずに、プロバスケットボール選手を目指して今までやってきました。そして、今までの取り組みもあり、プロバスケットボール選手になることができました。

プロになってから感じたことですが、スポンサーさんや、ファンの皆さんが自分が思っていた以上に、応援してくださる方々がいて、そこにありがたみを感じています。同時に、今、私が応援してもらえているのは、自分がバスケットボール選手だからです。したがって、スポンサーさんやファンの方から自分はお金をもらっていると思っています。私は、今のバスケットボール選手という職業は素晴らしい職業だと思います。一方でこの職業に終わりがあることも知っています。

ふと「自分からバスケットボールを取ったときに何ができるのだろう」と考えましたが、考えても思いつかなかったんです。人はいずれ死ぬということくらい、分かり切っていることなのですが、バスケットボール選手という職業は、10年、15年位で終わりがきます。誰でも分かることなんですが、改めて認識しました。

引退する前に今からできることをやらないといけないと考えるようになりました。検索をしてみると、デュアルキャリアという言葉に出会ったのです。デュアルキャリアは、競技と仕事を並行する考えだったので、まさに今の自分の考えを言語化した言葉だと感じました。

アウトプットの発信場所としてSNSを活用

【izm】
危機感を感じてからはどんなことに取り組まれてきましたか?

【牧】
まずはお金に関するジャンルの本を読みました。お金の仕組みがどのようなものか、分からなかったからです。お金をどう増やしていくのか、という疑問があったので、勉強しました。

また、大学の同期が良い企業に対して、就職活動をしているのを見て思うことがありました。それは彼らと自分との差が大きく生まれるのではないか、ということです。僕自身がバスケットボールをしている間、彼らは社会人として多くのスキルを身に着けます。差が生まれる前に今からできることを考えようと思いました。今の自分は、バスケットボール選手です。選手は、さまざまな方が見てくださる職業です。バスケットボール選手という立場を活かして、自分の考えなどをSNSで、発信をしようと考えました。発信した結果、新しい繋がりができました。五勝出さんと繋がれたのもひとつです。

【izm】
インプットもしながら、アウトプットも始めている、ということですかね?

【牧】
そうですね。

特にキングコングの西野さんは凄いと思います。アイディアが沢山出てくるところとか、話が面白かったりして、非常に勉強になります。

【izm】
発信することの手ごたえや反響はやってみていかがですか?

【牧】
僕はnoteや音声メディアのVoicyを始めました。自分の考えていることを言語化することは、初めは難しかったです。ですが、発信をしていくうちに、バスケットボール界以外の方たちとも繋がることができました。

【izm】
バスケットボールをしている選手たちへの指導はされたことがあると思います。バスケットボールを経験していない人たちにバスケットボール以外のことを伝えるのは今までの感覚と違いますか?

【牧】
全然違います。やはり、今までは自分のSNSでは試合の勝敗しか発信していなかったんです。もちろん、それも良いのですが、勝敗は誰もが知っていることです。きちんと自分の考えなどを発信したい気持ちがあり、SNSを続けています。

【izm】
今発信している内容はどんなものですか?

【牧】
日々の生活で感じたことや考えたことなどを、1回文章に起こしてから発信するようにしています。今後はデュアルキャリアなどのテーマに絞りたいと考えています。

【izm】
Bリーグでは現役中に選手と並行して引退後のために何か取り組まれている選手はいますか?

【牧】
私が知る限りですが、Bリーグの選手で現役中からビジネスなどに取り組んでいる人はいないと思います。

【izm】
YouTubeをやっている方は何名かいますよね?

【牧】
多くはいないです。

【izm】
チームとのバランスがあるとは思いますが、自分で他のビジネスをするのはどう思いますか?

【牧】
悪いことではないと思います。しかし、チームと相談をして競技とのバランスを取りながらすべきだと思います。

今後のデュアルキャリアの展望

【izm】
牧選手は、仕事とか事業とかは今後、何か考えていらっしゃいますか?

【牧】
仕事や事業をもうひとつのキャリアという部分で、始めていきたいと考えています。ただ、具体的には全然思いつかないんです。正直そこに関しては、焦っているわけではありませんので、多くの方と話しをして、じっくり考えていきたいです。

【izm】
ロールモデルにしているBリーガーやアスリートはいますか?

【牧】
Bリーガーではないですが、サッカー選手の本田圭佑さんは、次元が違うな、と思います。本田圭佑さんは競技でやっている一方で、自分のビジネスをしています。そういった姿を見ると、かっこいいなと思います。
アスリートは僕の中では「かっこいいもの」というイメージがあります。だからこそ私自身アスリートの方たちには、かっこよくいて欲しいと思っています。引退した後の話ですが「破産しました」「飲食店を始めてみて失敗しました」など、アスリートの失敗談を聞くたびに残念な気持ちになります。私はアスリートには、かっこよく生きていてほしいと思っています。そのためにも、まずは私自身もかっこよくあり続けたいというのはあります。

【izm】
事業などを始めてみようとしたことはありますか?

【牧】
今現状、自分にできることは、SNS発信かなと思っています。五勝出さんにも、相談させていただいて、noteを書いてみたり、Voicyを始めたりという段階です。

【izm】
先を見据えて今後チャレンジしていきたいことって、今はあるんですか?

【牧】
まだないです。事業を起こしたいという気持ちはあります。ですが、そんなに甘くもないことは、分かっています。色々な話を聞かせていただく中で、わかったことは、結局どこかでどれだけ批判をされても、マイナスなことがあっても、行動しないと何も始まりません。今年1年かけて発信してきた中で、少しは繋がりも徐々につくれ、自分の存在を知ってもらうことができました。個人的には1、2年でもう少し具体的なことに取り組むことができればもっと面白くなると思っています。

【izm】
SNSとかピッチ外と競技は分けられていますか?また、どうやって分けているとか、切り替えているとかありますか?

【牧】
バスケットのキャリアの話として、バスケットを疎かにすることは、絶対にないです。自分は分けて考えていて、バスケットはバスケットで考えています。もうひとつのキャリアを築きたい気持ちは、勿論あります。しかし、別のキャリアは別のキャリアとして、分けて考えています。

【izm】
周りの他の選手を見ててどうですか?

【牧】
集中できない人もいると思います。人それぞれのかたちがあるので、一人ひとりが自分にあった活動をするのが良いと考えています。私は、あまりBリーグでSNS発信を積極的に行っている選手がいないので、注目してもらえるチャンスだ、と思って取り組んでいます。

【izm】
最後に今シーズンの抱負を聞かせてください。

【牧】
今シーズンの抱負は、チームとして優勝することです。優勝に向けて自分がどれだけ絡めるかを今後頑張っていきたいと考えています。ファンの皆さん、引き続き応援よろしくお願いします。

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