「ピッチ内外がつながる」Jリーガー米田隼也が語る ”プロで活躍する為に大事なこと”

インタビュー記事
「ピッチ内外がつながる」Jリーガー米田隼也が語る ”プロで活躍する為に大事なこと”

ピッチで輝かしいプレーを見せるアスリート1人1人に、育成年代の頃の努力や周囲のサポートがあり、引退後の新たなチャレンジがある。izmマガジンではアスリートを中心にスポーツに向き合う人々のストーリーを、良い部分も悪い部分も包み隠さずお届けする。

Vol.10の今回は、静岡学園高校から順天堂大学、そして当時J1リーグ、V・ファーレン長崎に加入。プロの舞台を経験し、感じたメンタルの重要性、ピッチ内外の行動。常にサッカーと向き合ってきた米田選手のサッカー人生の経緯と想いに迫ります。

〈PROFILE)米田隼也
福岡県北九州市出身。静岡学園高校で全国高校総体準優勝を経験し、高校卒業後は順天堂大学へ進学。その後Jリーグ V・ファーレン長崎に加入。プロの世界で戦いながら「不可能を可能にしていく人が増えた社会の実現」に貢献することを理念として活動している。

レベルの高さに驚いた中学時代

【izm】
米田選手は小中学校時代、選抜などに入っていましたか?

【米田】
小学生時代は九州選抜には行けなかったですが、県選抜には入っていました。

【izm】
中学の進路選択はどんな感じでしたか?

【米田】
少年団のチームが中学校のクラブチームと繋がりがあって仲の良いチームだったので、
自然とそこに進むようなルートになっていました。

【izm】
頭角を現したのは中学時代からですか?

【米田】
小学校から頭角を現していたとは思います、、(笑)
けど、レベルが低いというか、狭い世界で自分が上手かっただけなので。
今までは自分が一番だなと思っていましたが、中学で北九州市の一番上手い選手たちが選考されているのを見てレベルの高さに驚きましたね。

【izm】
中学時代のチームの成績や選抜などはどうでしたか?

【米田】
僕たちの代は中学3年時にクラブ初の全国大会出場を決めました。
歴代で一番強かったと思います。

絶対に静岡学園に行きたいと思った

【izm】
その後、静岡学園高校に入学しました。中学校の全国大会出場がきっかけで入学できましたか?

【米田】
いや、この成績は全く関係なくて。
僕が通っていた中学校のチームから初めて静岡学園高校に行った人がいて、そこでパイプができました。
よく練習試合をしていたので、その時にうまく自分を表現できてスカウトされた感じです。

【izm】
当時、静岡学園高校以外の選択肢はありましたか?

【米田】
ありました。他にもいくつか練習参加していたのですが、当時高校3年生だった現川崎フロンターレの大島僚太さんだったり、長谷川竜也さんのプレーをテレビで見てワクワクして、もう絶対静岡学園高校に行きたいと思いました。

【izm】
長谷川竜也さんと静岡学園高校では1年生と3年生の関係ですよね?

【米田】
そうです。
めちゃくちゃ怖かったです(笑)

【izm】
あんなに可愛らしい感じでいつも過ごしてるのに?(笑)

【米田】
あの時は少し違いました(笑)

【izm】
静岡学園高校に入学後、3年生に今プロで活躍されてる選手がたくさんいて、すぐにご自身が活躍できる感覚はありましたか?

【米田】
僕たち最初は54人くらいでスタートしました。そんなに負けているとは思わなかったのですが、静学の中学でやっていた選手たちはドリブルだったりリフティングがめちゃくちゃ上手かったので、この人たちに勝てるか不安でした。ただ、練習頑張っていたら試合にも出れて10番を背負わせてもらったので、その展開には僕自身もびっくりしました。

【izm】
思いのほかうまくいった感じですか?

【米田】
そうですね。
1年生の時からアピールがうまくできたと思います。

【izm】
高校時代は選抜だったり選手権はどうでしたか?

【米田】
選抜は入っていなくて、選手権も僕は一度も行けませんでした。
インターハイは3年連続で出て、1年の時に準優勝、2年ではベスト8、3年の時はベスト16でした。1年生の時、全国大会に出場し準優勝できたことが順天堂大学に繋がったので運がよかったなと思います。

【izm】
なるほど。選手権でテレビに出るとかそういうのは叶わなかったけど、着実に順天堂大学のスカウティングの人に見てもらったり、そういう意味では積み上げられた3年間だったということですね。

【米田】
そうですね。
本当は高卒でプロを目指していたのですが、高3の時に怪我をしてしまい、
夏に練習参加ができず、大学進学に進路を絞りました。

【izm】
どんな怪我だったのですか?

【米田】
怪我は腰椎分離症で4ヶ月程プレーができませんでした。

【izm】
4ヶ月って結構長い期間だと思うのですが、どういうメンタルでリハビリをなさっていたのですか?

【米田】
そのときちょうどプロフェッショナルで本田圭佑選手が出ていて、怪我はチャンスだと言っていたことが当時の自分と重なりました。練習ができない分、何か違ったことをしてカバーしようと思い、親にお願いして初動負荷のトレーニングなどに通わせてもらいました。トレーニングをしたことで自分のパフォーマンスが明らかに変わっていることに気付きました。今となっては、あの時良い時間を過ごしたことで、今のパフォーマンスアップに繋がっていると思います。

【izm】
小さい頃からサッカーをやってきて、親御さんは米田選手にどういう関わり方をしてくれていましたか?

【米田】
お母さんは結構サッカーが好きで、よく見にきてくれたしお手伝いをしてくれてました。
お父さんは当時そこまでサッカーに興味はありませんでした。今はとてもサッカーが大好きになったそうです。やらされている感覚は全くなく、あたたかく見守ってくれて、夢を応援してくれる両親でした。

スポーツの本質に気づかせてくれた大学時代

【izm】
順天堂大学では米田選手にとって転機になったと思います。得たものはありますか?

【米田】
自分が変わりましたね。1年目の吉村先生はチームメイトの関係性だったり、走れる選手が走れない選手をカバーしようという補完する関係をすごく大事にしていて、今までのサッカー人生で指導されたことがないような感じでした。そういう風にサッカーすると面白いと気づかせてくれました。

【izm】
ピッチ内では充実した大学4年間でしたか?

【米田】
そうとも言い切れません。大学2年の時に監督が変わって価値観やサッカーが合わなくなった時がありました。型にはめられすぎて自分のプレーができなくなり、全然サッカーが楽しくないなと思ったりした時期もありました。正直サッカーをやめることも頭によぎりましたが、それも含めていい経験ができたと思っています。

【izm】
そのような状況から少しずつよくなっていく時に、何かきっかけになった誰かの言葉とか、自分で意識したことはありますか?

【米田】
誰かの言葉というよりは同級生のメンバーや先輩達、選手同士の関係性がすごくよかったことで救われましたね。

【izm】
大学生までの期間を振り返って、印象的だった指導者はいますか?

【米田】
やっぱり吉村先生になります。
技術面を教わることはほとんどありませんでしたが、本当にサッカーというスポーツの本質に気づかせてくれて、今までとは全然違うアプローチを知り、かなり衝撃を覚えました。

【izm】
今、プロ4年目に差し掛かるタイミングで、大学でプレーしてよかったなと思うところと、高卒でプロになるメリット、大卒と高卒の違いなどあればお願いします。

【米田】
最近すごく感じるのですが、大学はすごく時間があったなと思いますし、考える時間もたくさんありました。義務教育じゃない部分とか、パフォーマンスアップするにはどうしたらいいか、全部自分で思考して、選択できたのは大学だなと思ってます。
高卒でJリーグに入るメリットは、早い段階でプロの世界に入れることです。うまくいかなかったとしても、年齢的にまだ若いので。大卒だと即戦力になるので、そういった面では良さはあるのかなと思います。

プロの世界ではメンタルが大事だと思った

【izm】
当時J1リーグのV・ファーレン長崎に加入しました。具体的なオファーはどのタイミングでありましたか?

【米田】
僕は他の選手と比べると遅い方で、12月の始めくらいですね。夏に決まっている選手がたくさんいたので、結構焦っていました。長崎に決めた時は迷いはありませんでした。僕が1年目の時は高田明さんが社長だったので、それもすごい惹かれた部分でしたね。

【izm】
プロ1年目はどんな時間でしたか?

【米田】
プロの世界の緊張感とか、ネームバリューのある選手との練習や試合に慣れることが大事な1年でした。

【izm】
米田選手は大学だと選抜でもチームでもエース級だったと思うのですが、J1の舞台だと実際どれくらいやれたなという感覚がありましたか?

【米田】
いや、自分としては全然。もう50%以下ですかね。
8月の札幌戦で点を取ることができたのですが、それまで結構自分の中で苦しんでいて。
メンタル面でかなりやられていましたが、その得点を取ったことで自信がつきました。その後からの練習や試合も伸びのびプレーができて、プロの世界はメンタルが大事なことに気づきました。

【izm】
プロの世界で活躍するポイントなどはありますか?

【米田】
一番はやっぱりメンタルの部分だと思います。プロの世界ではメンタルの影響が大きいです。今でもメンタルの部分は自分で研究して、試行錯誤しながらやっています。

【izm】
メンタルにおいて具体的に取り組んでいることはありますか?

【米田】
とにかく楽しむようにしています。チームが勝てない時期はどうしてもうまくいかない時期が多くて、ベクトルをさまざまな人に向けてしまいます。その中でも自分にベクトルを向けて、勝たないといけないと思ってしまうところを、あえて常に楽しむというテーマを決めてプレーをしました。

ピッチ内とピッチ外が繋がる

【izm】
事前に米田選手とお話ししたときにコミュニケーションスキルという言葉が出てきて面白いなと思いました。コミュニケーションスキルについてはどうですか?

【米田】
2018年のプロ1年目にその部分をすごく痛感しました。周りとの関係性を上手くつくれず、自分、コミュニケーションスキルが足りてないなと。そのこともあり、2年目以降から先輩とご飯に行こうと決めました。コミュニケーションを取り始めて、すごくサッカーが楽しくなってきたし、パフォーマンスが上がってることが実感できたので、これはもっとコミュニケーションスキルを勉強していくべきだなと思いました。

【izm】
なるほど。

【米田】
そもそもサッカーはチームスポーツで人と人が協力してやるものなので、その点で言えば周りとの関係性が大事だし、話すことはすごく大事だなって思いました。それが1年目は全然できなかったので残念でしたね。

【izm】
コミュニケーションについて意識的に学ばれたのですか?

【米田】
はい。サッカーの練習が終わって、自分でスケジュールを決め、自宅でYouTubeを見て学ぶ時間を作りました。ノートにまとめたりも含めて5時間くらいは勉強していたと思います。サッカーをやめた後もビジネスでは人と人が仕事をする。コミュニケーションスキルは絶対に必要だと思います。

【izm】
ピッチ外のコミュニケーションというのはピッチに跳ね返ってくる感触ですか?

【米田】
はい。すべて繋がります。練習じゃないところ、食事の場面でもチームメイトと話せるようになってきたことで、自分もサッカーのパフォーマンスが上がったし、よりサッカーが楽しめるようになってきました。そういうところで、ピッチ内、ピッチ外が繋がる部分だなとすごく感じています。

今の夢はJ1ベストイレブンに選ばれること

【izm】
最後に米田選手の今後の夢や目標をお聞かせください。

【米田】
ピッチ内ではサッカー選手としてJ1ベストイレブンに選ばれることが今、一番ワクワクする夢です。2025年までに本気で達成したいと思っていて、そのために目標を細かく決めて日々過ごしています。
ピッチ外では自分の価値を高めていくこと。そのために色々な人に会って学んで、SNSを通じて発信していけたらなと思います。サッカーのパフォーマンスを高めるのが軸で、それに対してメンタルだったり食事に自己投資をして成長できたらなと思っています。

【izm】
来シーズンの活躍も期待しています。
本日はありがとうございました!

【米田】
ありがとうございました!

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