『プロ11年目で7クラブを渡り歩く。』ブラウブリッツ秋田・増田繁人選手に聞く、チームに求められる自分のポジションの作り方

インタビュー記事
『プロ11年目で7クラブを渡り歩く。』ブラウブリッツ秋田・増田繁人選手に聞く、チームに求められる自分のポジションの作り方

ピッチで輝かしいプレーを見せるアスリート1人1人に、育成年代の頃の努力や周囲のサポートがあり、引退後の新たなチャレンジがある。izmマガジンではアスリートを中心にスポーツに向き合う人々のストーリーを、良い部分も悪い部分も包み隠さずお届けする。

Vol.3の今回は流通経済大学付属柏高校でキャプテンを務め、高卒でアルビレックス新潟に入団した増田繁人選手をゲストに迎え、これまでプロ生活11年目で7クラブを渡り歩いてきた彼のキャリアの浮き沈みや育成年代からのエピソードを聞きました。どのチームでも求められる存在になるために増田選手が心掛けていることとは?

〈PROFILE)増田繁人
1992年6月11日生まれ。千葉県鎌ケ谷市出身。高さに絶対の自信を持つDFで、現日本プロサッカー選手会副会長。流通経済大学付属柏高校3年次は主将を務め、同校の第89回全国高等学校サッカー選手権大会ベスト4入りに貢献。2011年、Jリーグ・アルビレックス新潟に入団。2013年はザスパクサツ群馬へ、2014年は大分トリニータ、2015年はJ3のFC町田ゼルビアへ期限付き移籍。2016年アルビレックス新潟に4年ぶりに復帰するも翌年FC町田ゼルビアへ再び期限付き移籍。2018年ファジアーノ岡山へ完全移籍。2020年に藤枝MYFCへ完全移籍し、2021年にブラウブリッツ秋田へ完全移籍。

中学1年生でサッカーを初めて、6年で高卒Jリーガーに

【izm:五勝出】
2021年シーズンでプロ11年目、7チームを渡り歩いてきた増田選手ですが、今日は育成年代〜現在のキャリアで大切にしてきたことやその時々のターニングポイントについて色々と聞いていきたいと思います。

早速ですが、中学1年生でサッカー始めたと聞きましたが本当ですか?プロになる選手としてはかなり遅い方なのかなと思いますが。

【増田選手】
はい、あまり深くは考えていなかったのですが、調べてみたところ現役Jリーガーではサッカーを始めた時期が1番遅いらしいです。

【izm:丸山】
それは凄い!

【増田選手】
実は小さい頃からずっと野球をやっていて、中学校も野球で進学しようかなと思っていました。だけどサッカーもやってみたかったので、ちょうど肘が痛い時期に千葉県では有名な隣町のジュニアユースのチーム(FCクラッキス松戸)のセレクション受けに行きました。

【izm:丸山】
サッカーは全くやったことがないのに、ですか?

【増田選手】
そうです(笑)それで最初フットサルコートで5対5をやったのですが、ちょうどボールがタッチラインを割ったので、スローインでゴールに直接投げ込んだら、その場にいる全員が凍りました(笑)

その後、セレクションを受けた選手たちの中から自分含む5人が集められて「君たちはこの中で最も下手な5人だ、でも諦めないでまたセレクションを受けてくれ」って言われて。それで、受け続けたら3回目で合格しました。

【izm:五勝出】
エピソードのひとつひとつが豪快ですね!(笑)
中学からサッカーを初めて、流通経済大学付属柏高校に進学する時にはある程度は形になっていたのですか?

【増田選手】
一応千葉県県トレセンのBチームまでは入りましたが、形になっていたのかと言われると何とも・・・。サイズは大きかったし、よく喋るし、目立ってはいたと思うけど。

【izm:五勝出】
多少技術が足りなかったとしても、育成年代でサイズ感とリーダーシップがあるセンターバックは魅力的ですよね。高校の進路選択については、なぜ流経を選んだのですか?

【増田選手】
市船や県外の高校からも話はもらっていたのですが、一番熱心に誘ってくれたのが流経でした。あとは本田裕一郎監督(現・国士舘高校サッカー部テクニカルアドバイザー)のオーラにやられました(笑)

【izm:丸山】
本田監督は色々な逸話がありますが、実際はどんな人ですか?

【増田選手】
今になって振り返ると、当時の本田監督の言葉や指導には納得できる部分が多いですね。

【izm:丸山】
電柱に挨拶するのも、ですか?(笑)

【増田選手】
その意味はいまだに分かりません(笑)
「挨拶は基本だ!」ということでグランドの周りに立っている電柱の一本一本に「おはようございます!」「こんにちわ!」「こんばんわ!」って延々挨拶していましたね。。。

【izm:五勝出】
それはなかなかですね(笑)
他に印象的な本田監督とのエピソードはありますか?

【増田選手】
「常に前向きに物事を捉えなさい」「他人の喜びを自分の喜びにする」など、皆で唱えるチームの基本事項がありましたね。それは今でも時々思い出しています。

【izm:丸山】
確か、モウリーニョを流経のグラウンドに呼んだりもしていましたよね?

【増田選手】
そうですね、僕も直接モウリーニョから教わりました。本田監督はなんというか、凄い行動力とパワーを持ってる人です。

【izm:五勝出】
少し話が変わりますが、親御さんとは育成年代の頃からどういう関係でしたか?

【増田選手】
あまり細かいことには口出しされなかったような印象ですね。遠くからそっと見守ってくれていた感じかなぁ。でも、大事なタイミングでその都度相談はしていました。

【izm:五勝出】
増田選手は高卒でプロサッカー選手になりましたが、大卒でプロになる選手との違いを感じることはありますか?

【増田選手】
僕自身はあまり感じていないけど、大卒からプロ入りした選手の方がサッカー以外のことにもアンテナを張れているよねとか、人間的にも成熟してるよねと周りでは言われてるのかなと思います。

【izm:丸山】
反対に、高卒でプロになるメリットについても教えてください。

【増田選手】
大卒の選手よりも高卒からプロになる選手の方が大人びているかな。社会人として4年多くキャリアを積んでいるし、仕事としてサッカーに向き合っている。その間、接する人も皆大人だしプロばかりですからね。

あなたはどうしてプロになれたの?

【izm:五勝出】
それではプロサッカー選手としてのキャリアについて聞いていきたいのですが、アルビレックス新潟へはどんな経緯で入団することになりましたか?

【増田選手】
高校3年生の時にアルビレックスからオファーもらっていたのですが、当時は流経大がすごく強かったこともありその頃、流経大の監督を務めていた中野監督に「絶対に流経大に上がって来て欲しい」と言ってもらっていて。アルビレックスは流経大との関係性を壊さないように配慮してくれてはいましたが、最終的にはそれでも熱心に誘ってくれたので、その熱意を理由に入団を決めました。あとは単純に、自分自身プロでやってみたいという気持ちが強かった。

【izm:丸山】
実際、プロになってみて1年目のシーズンはどうでしたか?

【増田選手】
実質サッカーを中学校で初めてから6年間でプロになったので、そこで経験値が圧倒的に足りていないことに気付きました。

【izm:丸山】
逆に、そこで初めて気付くんですね!(笑)

【増田選手】
はい。中学のチームはドリブルとか個人技が中心でしたし、流経ではとりあえず目の前の相手に勝てということしか教えてもらっていませんでした(笑)だからプロになってから初めて戦術であったりシステムを教わるんだけど、自分は本当にサッカーを知らないんだなと痛感しました。監督や先輩の選手が何を言ってるのか全然理解できなくて・・・。

【izm:五勝出】
その状態でプロになれているんだから、どれだけ潜在能力が高かったのかが伺えますね。

【増田選手】
いや、とりあえずデカくて喋れたからだと思います(笑)

あとは、一芸に秀でていたという部分はあるかな。同世代にはヘディングでは絶対に負けなかったし、プロのカテゴリーでもそこだけは最初から通用しているという手応えがありました。

【izm:丸山】
戦術に関してはプロ入りした後、どのように学んで行ったのですか?

【増田選手】
チームが勝つためにチーム戦術と個人戦術はもちろん重要で、早く習得すべく取り組んでいきました。だけどその後、そのことが原因で泥沼にハマってしまって・・・。

苦手にしていたセンターバックからのビルドアップ等を求めらるようになり、克服しようと試行錯誤していたのですがミスが続いて自信を失って、またミスが続いて、、、という負のサイクルに陥った時期がありました。 その後、レンタル移籍に出されるんだけどそこでも試合に出れなくて、完全に選手として自信を失っていました。

4年目の大分トリニータへのレンタル移籍が終わった段階で、自分がどんな選手なのか分からなくなって正直サッカーをやることが怖くなっていました。今だからこうやって公に話せることですが。

【izm:五勝出】
3年連続で違うクラブへレンタル移籍に出させられるのも、それはそれでしんどい部分もありますよね。。。

【増田選手】
そうですね、それでその時に親に相談したら

「あなたはどうしてプロになれたの?」
「自分の武器があるんだから、そこで勝負しなさい」

って言われて目が覚めました。

【izm:五勝出】
それはめちゃくちゃいい話ですね。確かに、そういう状況だと自分では気づけないことが多いですもんね。でも、素直に人の話を聞き入れられるのは増田選手の強みですね。

【増田選手】
当時は自信がなさすぎて、大分の海に行って気づいたら2時間ボーッとしてるくらい完全にメンタルやられてました(笑)

メンタルがやられていた時期でも笑顔の増田選手…!

【izm:丸山】
近くに相談できる人はいなかったのですか?

【増田選手】
当時は1人で何とかしようとするタイプだったからなぁ。もう少しシンプルに考えて、人に相談したりすれば違ったのかもしれないですね。

【izm:丸山】
今の所属チーム(ブラウブリッツ秋田)では若手選手とかから相談受けたりすることも多いですか?

【増田選手】
多いですね!若手選手も多いですし自分が色々と経験してきたこともあるので、気にかけて話しかけるようにしています。

どのクラブでも自分のポジションを作るためには

【izm:五勝出】
そのような増田選手の振る舞いとも関係してくると思うのですが、11年間プロをやってきて7クラブを渡り歩いてきた増田選手が、チームの中で自分のポジション・居場所を作るための秘訣はありますか?

【増田選手】
流経で高校時代からキャプテンをやっていたこともあり、思考は個人でなく組織に向いてるのかなと思います。サッカー選手は個人事業主で結果を残してナンボなので自分のことを考えがちだけど、僕は比較的組織のことを考えて動いている。

【izm:丸山】
流経の選手たち、個性の塊ですもんね(笑)

【増田選手】
あれをまとめるのは本当に大変だった(笑)

【izm:五勝出】
チームへの働きかけについては、具体的にどんな行動をしていますか?

【増田選手】
抽象的ですが、常にチーム内に良い雰囲気を作ることは心掛けています。今はチームがうまくいかない時こそ、選手だけでなくスタッフ含めチーム全員が同じ方向を向けるようにするのも僕の役目かなと思っています。

【izm:五勝出】
それはプレーで示すことが多いですか?

【増田選手】
プレーで示すのが説得力もあるし、最適だと思う。ただ僕の場合は試合に出れなかった時期も多かったので、そんな時でも自分に何が出来るかを常に模索していますね。

【izm:丸山】
でもベンチに居る選手がそれだけチームのことを考えて行動してくれるのは、組織としてはありがたい存在ですよね。選手として試合に出て結果を残すことと、チームがうまくいくために周囲に気を配って働きかけることは、一見相反する部分も出てきそうですがどうでしょうか。

【増田選手】
確かにそうですね。一選手として試合に出るために自分に足りないものとか、自分の置かれている状況を客観的に見るようにしているので、そうすると自然にチームに足りないものも見えてくるようになりました。

【izm:五勝出】
組織に貢献することこそが、自分を評価してもらうことに直結する部分もありますし、その辺りは増田選手の中では別々の事象ではなく繋がっているのかもしれないですね。

【増田選手】
自分が成し遂げるよりも、自分の好きな人たちと達成感を得ることの方が好きなので、個人競技には向いてないタイプだとは思います。

【izm:五勝出】
そういう選手はチームに1人は必要ですよね。

【増田選手】
アスリートは周りを見ないで突き進むタイプが多いですからね(笑)

【izm:丸山】
増田選手は今年29歳ということで、サッカー選手としてはベテランに近づいてきていると思うのですが、心境の変化はありますか?

【増田選手】
心境の変化はありますね。いつかは必ず引退する時が来るし、サッカー選手としての終わりを感じる様になってきました。だから最近はサッカー以外の世界にも触れてみようと思っています。何事もやってみないと分からないから。色々なものに触れて、自分は何が好きなんだろう、何が合ってるんだろうと徐々に模索したいなと。

サッカー選手としての今後と引退後のキャリア

【izm:五勝出】
サッカー選手として今後こうありたいという姿はありますか?

【増田選手】
もちろん出来るだけ上のレベルでプレーしたいと思うし、サッカー選手のキャリアをしっかりとやり切りたいと思っています。自分の中でサッカーをやり切ったと実感を得られれば、次のキャリアにも悔いなく行けるのかなと。

【izm:五勝出】
現役を引退した後のキャリアについては何か考えていますか?

【増田選手】
選手のサポートをしたい気持ちはありますね。コーチや指導者ではなく、違う立ち位置から選手に関わって、自分自身も新しい景色を見てみたいなと思っています。

【izm:丸山】
現役中はもちろん、増田選手が引退した後に一緒に面白いチャレンジができるように僕らもこれから頑張ります!今日はお忙しい中ありがとうございました!

【増田選手】
ありがとうございました!

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