元ファジアーノ岡山 上條さんに聞く「4年でJクラブをクビになった僕が今、経営者になれた理由」
ピッチで輝かしいプレーを見せるアスリート1人1人に、育成年代の頃の努力や周囲のサポートがあり、引退後の新たなチャレンジがある。izmマガジンではアスリートを中心にスポーツに向き合う人々のストーリーを、良い部分も悪い部分も包み隠さずお届けする。
Vol.5の今回は、流通経済大学卒業後、ファジアーノ岡山にてプレーをした上條宏晃選手をゲストに迎え、学生時代に強豪校で学んだことやプロで戦い続ける難しさ、セカンドキャリアにおける現役引退後の仕事の苦労等について聞いた。上條さんが考えるアスリートのキャリアとは?
〈PROFILE)上條宏晃
1989年4月22日生まれ。千葉県出身。流通経済大学付属柏高校時代、3年時の2007年に高円宮杯全日本ユース(U-18)選手権、全国高校選手権を制し2冠を達成。高校卒業後は流通経済大学に進学し、2012年ファジアーノ岡山に入団。 2015年シーズン終了をもって契約満了となり、現役引退が発表された。引退後は不動産業界に就職し、現在は株式会社LEALE代表取締役としてアスリート人材のキャリア支援を中心に事業を展開している。
公立の部活動から、名門・流通経済大学柏へ
【izm】
いきなりですが、上條さんはサッカー選手を引退されてからはどういう生活だったのですか?
【上條】
外資の損害保険から、不動産、その後人材系ですね。
【izm】
結構、渡り歩いていますね!
【上條】
そうですね。
【izm】
ではこの辺りは後ほど詳しくお聞かせいただきたいと思います。
まずは育成期間の事をお聞きしたいのですが、どんなキャリアを歩んで来られたのですか?
【上條】
年少の時、千葉県に引っ越してそこから近所のサッカークラブで始めました。
【izm】
いつから頭角を現したんですか?
【上條】
いやいや、頭角を現すなんてレベルではないですが、ただ身体は大きかったので、目立ってはいました。小学4年生までは、蹴って裏に1人で抜けていけるみたいな(笑)
【izm】
中学時代はどうでしたか?
【上條】
普通に近所の中学に進学して、部活でプレーしていました。
【izm】
それは千葉のサッカーエリートでは普通のコースですか?
【上條】
いや、普通はジェフとかレイソルのジュニアユースですよね。
僕はたまたま姉の担任がサッカー部の顧問で強引に勧誘された感じですね。
【izm】
中学で結果は残せましたか?
【上條】
先輩たちは強かったんですが、僕らの代は弱くて。
ただ、個人ではクラブチームと中学を混ぜた選抜チームがあり、そこには入ってましたね。
【izm】
ではチームとしては今ひとつだったけど個人としては名前が売れてたということですね。
そこから、高校は流経柏にそのままと言うことですか?
【上條】
市立船橋からも声がかかっていたんですが、セレクションの日程を忘れてしまって(笑)
それで流通経済大柏に決めました。
圧倒的に、ユースより高校サッカーの方がきつい
【izm】
高校はどんな競技生活でしたか?
【上條】
一年生の時から試合に出てましたね。
【izm】
全国大会に出てたんですか?
【上條】
活躍はしていたのですが、怪我してしまって・・・
だから実際に全国の舞台に出るのは2年からです。2年のインターハイが初めてですね。
【izm】
では一番注目されたのは3年生の冬ですか?
【上條】
そうですね、注目されたのは冬ですが、一番印象深いのは高円宮杯で優勝した時ですね。
やはり真のチャンピオンは高円杯ですから。
【izm】
親御さんはどんな方だったんですか?
【上條】
父親は野球選手だったんですよ。
だからスポーツには理解があって、勉強しろとも言わなかったし、野球やれとも言わなかったし・・・
コアなファンでいてくれていました。毎試合見にきてくれて、ビデオ撮ってくれていました。
逆に母親には口うるさく言われていました。「感謝することを忘れないでね」みたいな。
【izm】
なるほど(笑)
高校時代に戻りますが、振り返ってみてユースと高校サッカーの違いは感じましたか?
【上條】
圧倒的に思うのが、ユースより高校サッカーの方がきついと思います。
メンタルとか、練習量、あと上下関係も本当に軍隊みたいだったので・・・
まあ、僕自身はユースに入ったことがないのでわからない部分もありますが、彼らは髪も伸ばして、先輩の呼び方も「〜君」みたいな。
僕らは自転車でグランドに行くのですが先輩に会ったら、自転車降りて挨拶しなきゃいけないんです。だから1年生は自転車乗らないんです、降りるのが面倒くさいから押してました。
【izm】
なるほど(笑)
では大学時代はどうでしたか?
【上條】
いや、大学時代は怪我がちであまり活躍できていないんですよ。
いい思い出はあまりないですね・・・
4年間のプロサッカー選手生活で得たもの
【izm】
では、どうしてファジアーノに?
【上條】
それが本当に、4年の時も捻挫を繰り返していて、試合にも出れてなかったのですが
ファジアーノの練習会に呼ばれて参加して。その時はメチャクチャ調子が良くて。
本当は3日で練習会が終わるのですが、もう少し残ってくれと言われて結局1週間くらい参加しました。
最後、本オファーではないのですが、監督に一緒にやりたいと言ってもらうことができて入団に繋がりました。
【izm】
それはすごいですね!
【上條】
たまたま調子が良くて、チームにフィットしたんですね。
【izm】
4年間のプロ生活はどうでしたか?
【上條】
全然ダメでした。
プロになる準備もできてなかったし、メンタル面も含めてプロになって満足してしまった感じでした。
【izm】
それは同期含めて、他の選手と比較してという事ですか?
【上條】
そうですね。当時は自分はやり切れていると思っていたのですが、今振り返ると全くできていなかったです。
ピッチ外でも、身体のケアだったり食事のことだったり、だからこそ、怪我も多かったですし・・・
【izm】
最終的には4年で契約満了になるわけですが、そのあと他で移籍して現役を続行することは考えなかったのですか?
【上條】
正直、自分のためにサッカーを続ける気はもうなくて。
ただそのタイミングで結婚してるんですよ。だから妻のためと、両親のために地元クラブで続けようと思っていました。
【izm】
では、もうプロとしては考えてなかったのですね?
【上條】
そうですね。プロとして活躍できるイメージはなかったですね、もう限界かなと。
【izm】
何か育成年代の子供達やその親御さん達に向けてアドバイスはありますか?
【上條】
そうですね、サッカーに限らずですが、スポーツでプロを目指すくらい練習する子どもは凄く上手にPDCAを繰り返していると思うんです。
ただそれを上手く言語化できていない。本当に無意識にやっているので親御さん達は、今日この練習して何ができて何ができなかった、その課題克服のためにどうすれば良いということを、言葉にしてきちんと残すという作業は大事だと思います。
サッカーで培った”努力の仕方”
【izm】
では引退した後はどうでしたか?
【上條】
正直、きつかったですね。
ギャップが凄すぎた・・・時間の制約もありましたし。
【izm】
最初は外資の保険ですよね
【上條】
そうです一日300件から500件くらい電話してアポ取りです。
【izm】
メンタルやられそうですけど・・・
【上條】
いや、漠然とですけど社長になるという目標があったので最初はきつい仕事がやりたかったんです。
だからメンタルは全く問題ありませんでした。
【izm】
引退後、また振り出しから始めることは難しいですよね。
【上條】
でも26年サッカーしかしてない僕が社長になるにはきつい業界でやるしかないと・・・
あと結婚もしてましたし・・・
【izm】
なるほど・・・。
そのきつい仕事と流経柏とどちらがきつかったですか?
【上條】
全然流経柏ですね。
(一同爆笑)
【上條】
あれに比べたら全然辛くないです。
【izm】
大卒からプロ4年経て、社会に出たわけですが4年間の遅れは感じましたか?
【上條】
いや、それはないですね。
同年代に追いつけないとも思わなかったし・・正直、皆あまり努力してないなと思いました。結果を出してない人も、その状況でありながら何もしてないので・・ だから僕は陰でメチャクチャやりました。
【izm】
それはサッカーをやってきたおかげですね、きっと。
【上條】
そうですね、やるからには負けたくないですし。
【izm】
セカンドキャリアを考えたときに今までやってきたサッカーを超えるものを見つけるのは難しいと思うのですが、どうでしょうか?
【上條】
僕的にはサッカーほど情熱を燃やせる仕事を見つけるとか考えなくて良いかなと思います。多分、サッカー以上のものは無いと思うので。
だから将来、どんな生活をしたいかとか、どんな家庭を持ちたいかとかから逆算すれば良いと思っていて。
それは単純にお金であったり、家族にいい生活をして欲しいとかそう言った理由です。
あとは、やはりセカンドキャリアに関する問題意識はありましたね。
引退前も含めたワンキャリアでアスリートのキャリアを支援したい
【izm】
上條さんの将来ありたい姿を聞かせてもらえますか?
【上條】
まず家族の幸せな姿は作りたいですね、そこは一番です。
事業的にはアスリートのセカンドキャリアをサポートしたいので、アスリートの人達を受け入れて、引退後の次のキャリアで活きるスキルを習得できる会社を多業種で経営したいですね。
【izm】
その中で、今立ち上げている会社は人材系の会社ですか?
【上條】
そうです。
人材とマネジメントの2軸なのですが、セカンドキャリアというのではなく、引退前も含めたワンキャリアでアプローチしたい。そのワンキャリアに寄り添うビジネスを展開しています。
マネジメント領域は主にアスリートが対象ですが、PRとか何かに特化するのでなく、それこそ身体のコンディションから資産運用まで総合的にマネジメントできるような会社でありたいですね。
株式会社 LEALE
キャリアをワンキャリアで描く〜 LEALE 〜人生100年時代、一人一人のキャリアをワンキャリアで考え、人生のパートナーとして寄り添いサポートします。
https://www.lea-le.com/
【izm】
本日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございました!
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